あなたなら

結婚する相手には、どうなんだろ。
相性は、そう悪くないとは思う。
仕立てのいいグレーのスーツをいつも颯爽と着こなしている。

前途有望な若者がいるんだが、君どうかね?と上司が顔を輝かせて行ってきた。
そしてその人の名刺を渡された。

わたしの上司は、本当にいい方だ。
バラ色の頬に銀髪まじりの豊かな白髪が西洋人のように上品だ。
何度か会社にいらした奥様も素晴らしい。
「いつも主人がお世話になっております」と、こちらが恐縮してしまうほど、丁寧にあいさつくださった。
そして「主人は人使いが荒いから、遠慮なく言ってやって頂戴ね、あなた」との言葉には、長年の賢夫人の貫録すら感じた。

あんな上品な夫婦になりたい。
わたしの結婚生活への憧れは高まった。
その上司から、じきじきの推薦だ。

そして、その推薦通りの申し分ないお相手だった。
スーツがこれほど似合う人って、日本にそうはいないだろう。
それに絶品の黒髪の持ち主でもある。

波打つ天然パーマ。
垂れた前髪をかきあげる仕草がたまらなくセクシー。
でも、自分の魅力を自覚していながらも、そんなことはおくびにも出さない。

ましてや仕事モードに入れば、完璧に没我の境地で全力投球。
その姿勢とルックスとのコントラストが、たまらない。

「どうだね、彼?先方も乗り気みたいだよ」と、上司が進捗を伝えてくる。
本当に人がいいのだ。
相手がこの人だったら、わたしの返事は一も二もなく決まってるのに。
でも、彼はどうなんだろう?あまりにデキすぎじゃないだろうか?完璧すぎなのだ。

でも、断る理由は見当たらない。
ああ、悩む自分がもどかしい。

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