スーパーとスーツとわたし

去年からレジ打ちのバイトを始めた。
そこで、わたしは自分がなかなかの「べっぴんさん」だと知った。
まず、男性客は特に好色そうなおっさんは必ずわたしの列に並ぶ。

決まってねっとりとした視線を注いでくる。

お釣りを渡す手を、ギュッと握られる日も少なくなかった。
でもこれは新鮮な発見だった。

わたしは三姉妹の末っ子で、姉はふたりとも粒ぞろいの美人だった。
綺麗ね、素敵ね、上品ね。
こんな褒め言葉は、すべて彼女たちに注がれた。

ルックスにコンプレックスすら感じて育ったわたしだ。
でもバイト先でのねっとり視線は、新たなアイデンティティを与えてくれた。
つまり、わたしは美人ではないが、「そそる」オンナってことだ。

そういえば、色白のもち肌は我ながらすべすべだ。
一生懸命になるとピンクに染まる頬も、田舎者っぽくてイヤだったが、どうやら違うらしい。
「ドライアイスはご入り用ですか?」そう言うわたしの頬に、うっとりと見入る男性客は多いのだ。

そんな中に、スーツ姿の彼はいた。
毎日、夕方の閉店間際にやってくる新卒くらいの実直そうな、フレッシュマンだ。

彼も決まってわたしのレジに並んだ。
わたしの横顔や、レジバッグに食品を移す半袖からむき出しのわたしの腕に、遠慮がちな視線を走らせる。
毎回のお会計のあとに、伏し目がちにそっと目礼をして去っていく。

そんな彼を、いつしかわたしも待つようになっていった。
だけど、先週からぱったりと来なくなってしまったのだ。
今日も来なかった。

転勤したのか、あるいは彼女でもできたのか。
なんだか赤い糸がするりと手の平から滑り落ちてしまったような気がして、淋しい。
結婚するなら、あんな真面目そうな人がいいな。
翌朝、全速力でチャリのペダルを漕いで高校へと急ぐ。

»