スタジオにお返しします

そのとき俺のCPUのファンがブーンと唸った。
ホストネームは伝説の勇者のネームをつけている。
おっと中の部品が熱々になってしまってるんだな。
ノートPCの底を持ち上げ、卓上の小型扇風機のスイッチを入れて風を送る。

これ以上ハングアップしたら、お手上げだ。
昨日今日と、ハングしちゃってばっかで、もうトラウマになりそうだ。
流しっぱなしとはいえ、TVのお涙頂戴番組に耐えきれなくなってきて、チャンネルをニュースに変える。

日曜だってのに、今週は彼女からデートのお誘いもなし、音沙汰もなしだ。
会えばやれ、次の春夏はホワイトがくるだの、それにまんじゅう?違ったマニッシュな大ぶりの帽子ってどうかな?などのオシャレの話が主で、僕はずっと聞き役だ。
そこで、僕はそれと分からずに聞き流すワザを会得した。

「へぇ」と「そうなんだ」の相槌を一定の間隔で、打つ。
すると30分くらいで彼女は満足そうに、にっこりとほほ笑む。
会話の終わった合図だ。

いつの間にか「そりゃ東京じゃねえだろ?」って名称の巨大遊園地へ行く話がまとまってたりする。
彼女はネズミに会いに行く。
永遠の世界のアイドルだ。

でもきっと、彼女が好きなのはネズミじゃない。
彼女が愛するのは、童心を忘れない「無垢」な自分だ。
と、僕はTVのニュースにくぎ付けになった。

なんと、彼女が映っている!例の埋立地の遊園地。
隣には男が寄り添う。
画面のすれすれ、手を繋いでいるのが映る。

急いでミュートにしていた音量を戻す。
「こちら、年末のイベントでにぎわっていま~す」とサンタの格好をした女子アナウンサーが中継している。
「現場からスタジオにお返ししま~す」。
あくまでご陽気な声だ。

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