母集団

「見て~わたしの今月の占い!赤い糸の運命の相手と出会いますだって」。
コンビニで一緒に立ち読みしていた彼女が奇声じみた声をあげた。
未購入の雑誌を大きく開いて僕に見せる。

「どうする~?わたしが他の男性と赤い運命の糸で結ばちゃったら?」。

いたずらっぽく笑いかけてくる。

「いいんじゃない?」。
そう声に出して言えたら、どんなにスッキリするだろう。
が、その勇気が出ない。

失うのが恐いんじゃない。
単純に目の前でご機嫌斜めになられるのが恐いのだ。
「あなたって何座だっけ?」。

何度言っても覚えてくれない訳だ。
僕の神経細胞の一部が音を立てた。
「あのさあ、占いって基本信じないんだよね」男らしい野太い声が出た。

「だいたいさあ、科学的根拠ってあんの?じゃ星座が同じ人って毎月?毎週?同じ運勢な訳?んな訳ねえよな」。
妙に清々して、僕は続ける。

「言いっぱなしでいいんだろ?どうしたって確率の統計とれないよな?まあ百万歩譲って、結果を集計してたとしようよ。その場合、返答率ってどれくらいになるのかな?いいことあった、当ったじゃん!って人はフィードバックもするだろうけど、悪かったとか当らなかった人たちは返事すらしないんじゃないのかな?それにその雑誌ってどうせ君みたいな若い姉ちゃんたちが読むんだろ?フィーリングでしか生きてないグループが母集団ってことだ。
信用性は果てしなくゼロだよ」。
我ながら鮮やかな論理展開に満足し、ドヤ顔になる。

彼女相手にこういう話口調をしたのは、初めてだ。
彼女の雑誌を持つ手先が震えている。
怒りの前兆か。

爆発か。
もう、どうにでもなれだ。

»