オフ会

どう見ても、20代後半には見えない。
ネットで知り合った人との待ち合わせに来たその男は、どう見ても30代後半、もしくは40代前半。
どうしても、失望を隠せず顔に出てしまう。

すると男は言った。
「いやあ、道路が混んでてさ」。

男はわたしと歩調を合わせた。
そうして、ペラペラ話し出す。
「君の映画観、いいよね。
一番好きな監督って誰?」。

そうねえ、誰かな?考えている最中に、男はまたもペラペラ。
「俺は誰が最高って特定できないな。
どの監督もそれぞれ独自の視点、持ってるじゃん?特定なんてできないよね」。

だったら、聞くなよ…。
「いやあ、会えて光栄だなあ。
あの映画好き・ファンサイトで、君はマドンナだよ面白いよ」。

それから彼はなおも続けた。
「もっと華やかな人かと思ってた…実物はけっこう地味なんだ…あ、いやそうじゃないよ!落ち着いた人って、好きだよ俺」悪かったわ…これでも、思い切りオサレしてきたんですけどね。
いつもの3倍は「華やか」に装ったんですけどね。

「一番の作品って何?これって前も聞いたっけ?ネットの掲示板で」そうねえ、どれかなあ…。
考えていると、男がまたも待ちきれずに話し出す。
「俺は特定なんてできないね。

どの作品も、それぞれの監督、俳優たち、そして数限りないあまたのスタッフたちの思い入れが詰まってんだぜ。
失礼だよ。
じゃあ、他のは駄作なんですか?って話になるよな」。

だったら、聞くなよ…。
おかしいな、ネットじゃあ思い切り爽やかだったはず。
「イタリアン、予約してんだ。
フレンチは高いじゃん?そんな金、誰が持ってるんですかって話」。

そうして、わたしの夜はふけていった。

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