初対面

今日は最高の一日だった。
これ以上幸せな日は、もう二度とこないかも。
先輩が、告白してくれたのだ。
わたしが好きだって。
バイト先で初めて会った瞬間から好きだったって。
赤い糸すら感じてたって。
わたしもです!先輩!

叫びそうになる衝動を抑えるのに一苦労した。
やっぱりそうだったんだ。
赤い糸って出会った瞬間に感じるものなのって友達も言ってた。
「運命の相手に出会ったら、すぐ分かるんだから。
予兆?ううん、本当に突然よ。
大丈夫、絶対分かるから心配ないの」。
でも本当のところ、先輩とはバイト先が初対面ではないのだ。
わたしが先輩に赤い糸を感じたのは、もう何年も昔のことだ。
高校のとき、乗る電車が同じだったのだ。
その頃まだ学生服姿の先輩は、いわゆる「ファミリア・ストレンジャー」。
ほぼ毎日顔を合わすけど、名前も身元の知らない。
でも、何となく親近感を覚えている、そんな関係の他人だ。
でも、わたしと先輩のケースに、それは当てはまらないのかもしれない。
だって、先輩がわたしに目を留めたことなど一度もないのだから。
先輩には当時、付き合ってる彼女がいた。
先輩は彼女と一緒にじゃれあってるか、受験本を真剣に睨みつけてるかのどちらかで、わたしの存在なんか気づいたことすらなかったのだ。
だからバイト先で偶然に再会したときは、天にも昇る気持ちだった。
赤い糸が先輩を手繰り寄せてくれたんだね。
先輩は当時の制服姿より、ずっと大人びて男っぽくなっていて、まぶしかった。
「どっかで見た気がするんだよね」。
先輩は第一声、こう言った。

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